2009年6月12日金曜日

志賀理江子さん

2008年木村伊兵衛賞受賞の志賀理江子さんが、宮城県名取市北釜地区にアトリエを構えたとの記事が6/10付の河北新報に掲載されました。名取市は宮城県南部に位置し、仙台とは南東で隣接し、近くには海岸もあり自然にも恵まれています。また、仙台空港もあり、2年前の空港線の開業により仙台市内へのアクセスは非常に良くなりました。

志賀さんと仙台との関わりは、2006年に仙台メディアテークで企画・開催された"Re: search オーストラリアと日本のアート・コラボレーション"展の出品に当たり、仙台に滞在し、地元の方に質問を行いながら撮影を行った時からだと言います。その時の作品は、木村伊兵衛賞受賞作でもある写真集"CANARYカナリア"にも入っています。

志賀さんはこれまでイギリスを拠点とし作家活動をしてきたこともあり、オリジナルで作品を観る機会が僕自身ほとんどありませんでした。受賞作である"CANARY"と"Lilly"と言う2点の写真集での情報がほぼ初めての出会いだったと思います。木村伊兵衛賞後に、新宿コニカ・ミノルタプラザでオリジナルプリントを観た時に、それらは写真表現の枠に捉われず、むしろ現代アートに近い感覚を覚えました。プリントに現われている表現手段は、明らかに再編集されたものであったのですが、その手法はデジタルでのそれとも違うと思いました。
その後、東京オペラシティアートギャラリーでの"トレース・エレメンツ"展、東京都写真美術館での"オン・ユア・ボディ"展を続けて観た時もその印象は変わりませんでした。

HPで経歴を見ると、東京工芸大学を中退してロンドンに渡り、ロンドンチェルシー美術大学に入学し、その後もロンドンを拠点とし活動をしています。その点も考慮すると、作品制作時点での発想が国内の若手作家とは違うのかもしれません。そしてそのことで、われわれ観る側は、作品から受ける世界観を、一つの統一されたイメージとして理解出来るのだと思います。
僕自身は、志賀さんの作品を通して、生と死、瞬間と永遠、過去と未来と言った相反する言葉を、同次元の空間と現実の中に具現化されたイメージとして感じます。

いずれにせよ、このように才能豊かな若い写真作家(まだ28歳とのこと)が当地でアトリエを構え、作品制作を行うことは非常に嬉しいことです。この次は、宮城を始め東北各地で撮影された作品をまとめた個展を是非観たいと思います。

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