2009年6月28日日曜日

蜷川幸雄さんそして"さいたまゴールド・シアター"

蜷川幸雄さんが主宰をしている"さいたまゴールド・シアター"が、彩の国さいたま芸術劇場小劇場で現在公演をしています。(7/1まで)正式公演としては今回で3回目になります。

演目は、"アンドゥ家の一夜"と言い、ケラリーノ・サンドロビッチさんが書き下ろした新作を蜷川幸雄さんが演出するという、ほとんど考えられない組み合わせのものです。第1回公演が岩松了さんの新作でしたし、その公演を観に行ったケラさんは自身のブログでも絶賛していましたからね。と言っても、僕は今回観られないので、テレビ放映してくれないか願っているだけですが。

"さいたまゴールド・シアター"は、2006年に蜷川さん自ら選抜をして結成された、平均年齢70歳の劇団です。55歳以上の一般人を対象に募集したところ、約1200名の応募があり、その中の48名(現在は42名)が選ばれました。経歴はさまざまで、ほとんどの方はこれまでに演劇経験など無い人達です。そのメンバーと1年のレッスン期間を置き、中間発表会を経た後、2007年6月に第1回公演を行いました。

実は僕は彼らを生では観たことがありません。第1回公演の準備の様子を映したドキュメントとその公演をテレビ番組として見ただけです。1年間で何が出来ると言ってしまえばそれまでですが、劇団員の表情や蜷川さんとの接し方を見ていると、まさに俳優そのものであるように、僕の眼には映りました。実際、芝居から受ける印象は、その年齢や芝居経験の浅さを感じさせない程熱いものでした。

蜷川さん自身現在73歳で、年間10本以上の演出を行っている化け物のような方ですが(大変失礼な言い方ですが)、劇団員の方々は素人でしかも70歳近い年齢ですから、これは尋常ではありません。芝居として成立させること自体冒険だったと思います。

第1回公演"船上のピクニック"と第2回公演の清水邦夫作"95kgと97kgのあいだ"は、職歴など、劇団員の過去の経験を生かしたキャラクター設定とその身体表現で高い評価を受け、"95kgと97kgのあいだ"は国内外を代表する現代舞台芸術が集う祭典「フェスティバル/トーキョー」(2009年3月)に招聘されました。

ドキュメント番組の中で、稽古途中に劇団員の女性が、私にはこの状況でこのセリフは言えないと蜷川さんに話す場面があります。蜷川さんは、自分よりも年長のその女性に対し、自分の枠だけの考えだとその中でしか演技は出来ないし、台本に書かれたフィクションに意味を見出し(想像力)て行かなければ、他者との関係や繋がりを拡げることも出来ない。僕は99%台本に忠実に行う。それが僕の演劇哲学でもあると話していました。

これは、とても意外なことでした。セカイのニナガワと言われ、稽古場での厳しい言葉や行動が世間ではややもすると誇張気味に語られていた人ですからね。蜷川さん自身脚本は書かれないので、プロの演出家として作家を認めている(受け入れる幅が広い)から言ったのだと思いますし、逆に言えば、そういう作家としか仕事をしていないのでしょう。

いずれにせよ、"さいたまゴールド・シアター"は現在日本で最も刺激的な劇団のひとつだと言えます。

そして、個人の可能性は一つの意志の前では決して年齢には依存しないと言うことです。

また蜷川さんにとっては、シェークスピア全演目公演に並ぶライフワークなのかも知れません。
今後の活動を期待していますが、本を書く人は大変でしょうね。

今までの正式公演は、劇団員がほぼ全員が出演しているのですから。

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