2009年9月6日日曜日

新しいこと 挑戦と現実化

サラリーマン時代、電話との付き合いが非常に長かったせいもあり、今でも時折大手量販店等の携帯電話コーナーを覗くことがあります。ビジネス・フォン、ホームテレフォンから始まって、車載用電話、PHS、携帯に至るまで、あらゆる種類の外筐(本体のプラスチックの部分)の生産に携わってきました。NTTが民営化される前からですから、かれこれ24、5年といったところです。

初めはAT&Tなどのごついビジネスフォンを手がけていたのですが、NTTの民営化に伴い、いわゆるホームテレフォンが各社で発売されるようになりました。デザインも変わったものが数多く生まれ、家庭からダイヤル式の黒電話やアイボリーのプッシュ式電話が急激に無くなったのもこの時期です。

そんな時、ファッションデザイナーのアンドレ・クレージュがデザインしたホームテレフォンの仕事に関わったことがあります。日本通信工業が別会社を設立して、クレージュデザインの電話の発売を手掛けることになり、その本体の生産を請け負う事となりました。

デザインは2種類ありました。1種類はツートンカラーを2色のプラスチックで構成しなければならないため、先ず、本体を製作するためのマシンをカスタマイズすることから始まりました。当時は、ボタンのような小さいものでの実績はあったのですが、ホームテレフォンのような大型製品を製作する為のマシンがほとんどありませんでした。もう1種類は楕円形のドーム形状に、クレージュのトレードマークである雲のマークをちりばめ、ファンシー感のあるデザインでした。

両方とも技術的問題点が多々あり、初めて行う方法もあったりして、苦労はしましたがとても刺激的な仕事だったように思います。その時、これまでお付き合いしたプロダクトデザイナーとは違い、やっぱりファッションデザイナーだなと思える点がいくつかありました。

もっとも特徴的なものは色でした。今でこそ、ソフトバンクのパントーンカラーシリーズが出ましたが、当時は、多色でしかもパステル調の色をホームテレフォンに使用することはほとんどありませんでした。

通常はパントーンやDICといった色見本での提示が多いのですが、その時は服飾デザイナーだけあって、生地見本等での指示だったように思います。

そして、一番色出しに苦労したのが、フランスのケント紙で提示された白でした。明らかに日本で一般的な白より白色度が高く、生産時の歩留まり(良品となる割合)も悪くなるものでした。本体に施す雲の印刷もその白で、その上、何回かに分け行う必要があったので、一層効率を落とす原因ともなりました。

すったもんだしながら、2種類ともどうにか発売にこぎつけましたが、店頭に並ぶ姿を見た時に、いままでの苦労も飛んでしまう思いがしたことを今でも思い出します。

自分自身が新しいことへ挑戦することやこれまで誰も行っていないことを現実化するには、ただそれだけで苦労や忍耐が必要です。

それでも、それを達成する思いが折れない限り、結果は出てくると思っています。

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