2009年9月21日月曜日

セバスチャン・サルガド 「アフリカ」

東京都写真美術館で、来月24日からセバスチャン・サルガド「アフリカ」が開催されます。
昨日、偶然目にしたチラシで知りました。たしか、同じく東京都写真美術館で開催された「エッセイ」を観に行ったのが、2003年だと記憶していますから、6年振りになるのだと思います。今回は、作家自ら最後の大プロジェクトと語っている「GENESIS」からの最新作も展示されるようです。

セバスチャン・サルガドは、フォトドキュメンタリー作家として、もっとも偉大な写真家の一人と言えます。陰影に富んだ美しいモノクロームの世界は、現実の世界を写している写真表現の枠を超え、写真と言う既成概念さえも崩してしまうものです。一時、報道写真家集団マグナムにも所属していましたが、脱会してからは、あるテーマについて数年追いかけ、発表するようなスタイルになっています。

僕が初めてサルガドのオリジナルを観た時、絵画的な美しさやプリントの素晴らしさに先ず目が行きましたが、数作品を観るにつけ、その表層から受ける印象からはるかに深い写真の力のようなものを感じました。サルガドが写し撮った現実は、飢餓、貧困や環境破壊といったいわば、「悲惨」で「壮絶」な状況の数々です。観る者はその現実に目を背けたくなるかもしれません。

しかしながら、一方でそれらから受ける印象は、打ちのめされた人間を写すことで世界の不条理を訴えるというような感傷主義的な趣はまるでありません。むしろ、そこにある現実を真正面から見据え、人間として生きることへの尊厳のようなものを強く感じます。


僕は、好き嫌いを別にして、写真は2通りあると思っています。

一度観ただけで、それが鮮明に記憶として刻み込まれるものとそうでないものです。

サルガドの写真は、報道写真としてだけではなく、アートとしても、前者のものであると思います。また、写真の力によって実現できる世界の深遠さと、その頂きの高さを、私たちに教えてくれているような気がしてなりません。

近郊の方は、必見です。僕もどうなるか分りませんが、是非観に行きたい写真展です。

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