2009年10月25日日曜日

奇跡

残念ですが、奇跡は起きませんでした。

昨日のプロ野球パリーグCS第4戦が、楽天での野村監督最後の試合になりました。日本ハムのスレッジ選手に始まって、スレッジ選手に終わった感がありましたが、短期決戦と言われるものには、何かそんなツキもある選手が出るものです。

野村監督の試合後インタビューの中で、人間何を残すかが大事、そして教え子のような選手やコーチを残すことで、少しは野球界に貢献したかなと言う意味の言葉が非常に印象に残りました。両チーム合同でのグラウンド上の胴上げも、野村監督だからのことだったと思います。

もうひとつ、今週、奇跡は起こらなかったと話していたのが俳優の長門裕之さんです。そう、3年以上介護を続けてきた妻、南田洋子さんの死去です。南田洋子さんは3年前、認知症により女優を引退し、その後長門さんが介護を続け、その様子はドキュメンタリー番組として放映されました。

つい、2週間前の映像を見ると、何か普通に戻った様子で、僕自身非常に驚きました。その矢先の出来事だったので、会見の様子はとても見ていて痛々しかったです。長門さん自身とうに覚悟はあったと思いますが、目の前に現実を突きつけられた時の感情は何事にも及ばないものです。

井上ひさしさんの名作に「きらめく星座」という芝居があります。何回目の再演の時かは覚えていませんが、すまけいさん演ずる広告文案家、竹田にこんなセリフがありました。

「水惑星だからといって、かならず生命が発生するとはかぎりません。しかし地球にあるとき小さな生命が誕生しました。これも奇跡です。そのちいさな生命が数限りない試練を経て人間にまで至ったのも奇跡の連続です・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・わたしたちがいる、いま、生きているというだけでも奇跡中の奇跡なのです。こうして話をしたり、誰かと恋だのけんかだのをすること、それもその一つ一つが奇跡なのです。
人間は奇跡そのもの。人間の一挙手、一投足も奇跡そのもの。
だから人間は生きなければなりません。」

あまりにストレートな言い回しなので、何か気恥かしい思いがする人もいると思いますが、井上作品の根底に流れている一節だと、僕は思っています。人が感情の生き物である限り、落ち込んだり、へこんだりすることはままあるわけで、時にこんな言葉を思い出しながら、勇気づけられもしているわけです。

だからこそ、決してきれい事ではなく、短いこの時間の間に、本能としての生だけではない楽しみや感動を得たいとし、そして、残せる何かを探しているのかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿