2010年4月22日木曜日

模倣とオリジナリティー

5月1日から開催する上海万博で、テーマ曲やマスコットキャラクターのパクリ疑惑がこのところ多く報道されています。


以前、台湾によく仕事で行っていた頃、有名ブランドの偽物を見にいったことがあります。主に時計だったのですが、それは非常にうまく作られたもので、ある意味感心させられたものでした。その時に一緒に行った駐在の方は、おそらく日本からのお客さんを毎回のように連れてきている様子で、店の人とも仲良さげに話していました。僕は店頭にある商品を漠然と見ていたのですが、やはり似ているけどどこか違う印象はぬぐえないもので、とても買う気にはなれませんでした。

しばらくして奥から駐在の方が僕を呼びました。狭い通路を奥に入っていくと、店の人が何やら箱のようなものを取り出して、それを僕の前で開けました。その中には、本物そっくりの誰もが知っているようなブランド時計が並んでいます。触れてもいいとのことなので、その中のひとつを手に取り、仔細に眺めたのですが、ロゴも含めて見た目はそのままだった記憶があります。結局、買う事は無かったのですが、いやはや何ともという気分でホテルへと戻ったものでした。

僕は決して模倣自体を否定はしません。物作りの現場にはそれは言わば当たり前のことでした。一人の職人が成長する過程において、先ずは先人の真似から入るものでした。その頃はマニュアルなんかもないですし、先人も自分の技術や知識を懇切丁寧に教えはしなかったので、その技術を見て真似る(盗む)しかなかったのです。そんなことから始まって、自分の考えややり方を試行錯誤しながら、オリジナリティーを見つけていったように思います。

それにしても、上海万博の件はあまりにもひどいことで、このような国家レベルのイベントで行われるようなことではありません。知的所有権云々以前の問題だと思います。

僕は万博と聞くと、三波春夫さんと岡本太郎さんをすぐに思い出します。いずれもその道で独自の世界を作り上げてきた人です。さまざまな摩擦や世間の評判、好き嫌いといった極端さはあったのでしょうが、やはりそれは強烈なオリジナリティーがあったからのもので、それに勝るものは無いのかとも思うのです。

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