2010年5月20日木曜日

貸本屋の女性店主

「ゲゲゲの女房」に毎回登場してくるものに貸本屋があります。今の若い人にはあまり馴染みも無く、よく分からないかもしれません。昭和40年代、僕が小学生だった頃までは、実家のすぐ近くに貸本屋がありました。小学校から帰ると、毎週決まって少年漫画の週刊誌や月刊誌を借りにいったものです。


そこは、70歳を超えたと思われる(自分が幼かったから余計年齢が上に見えたかもしれませんが)女性がひとりで店を切り盛りしていたこともあって、新刊本と言えば、週刊誌や月刊誌ぐらいで、本棚にあるものはほとんど変わらなかったように思います。もっとも、僕は少年漫画しか借りに行っていなかったので、本棚に何かが新たに加わっていても気付きもしなかったのですが。

店に入ると、左手奥に小上がりのような所があり、ドラマで演じている佐々木すみ江さんがさらに年を取られたような感じのその女性は、いつも座布団を敷いた上に正座していました。週刊誌ですから毎週決まった曜日に出版されるわけです。もちろん、僕のような人間は何人かいるし、一回に数冊しか入荷しないこともあって、人気のあるものは当日借りることが難しく、いつも2番目に借りるつもりのものを持って帰った記憶があります。

僕も幼くして常連さんだったのですが、やはりその女性に「今はないけど、明日には貸せるよ」と言われると、ハイと素直に答えるしかありませんでした。

中学に上がる頃には、クラブやら友達付き合いの方に夢中になり、行く機会もめっきり少なくなりました。やがて、店も無くなり、その女性と会う事もなくなりました。それでも、毎朝「ゲゲゲの女房」を見るたびに、何故か薄暗い貸本屋の隅の方で、ひとり座っている女性店主の姿が目に浮かびます。また、そこにほぼ隣接していた映画館から漂っていたポップコーンの香りなんかもふとした瞬間に思いだしたりします。

昭和や幼い日へのノスタルジーといったものは普段はあまり意識しませんが、僕にとってはその貸本屋や映画館は、原風景のひとつなんだと思います。

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