2010年5月24日月曜日

「裏切りの街」を観て・・・。

「裏切りの街」


パルコ劇場からのメールで作品タイトルを初めて見た時には、とても違和感を覚えました。これまで観てきたポツドール公演の三浦大輔さんと結び付かない、そんな印象を受けたからかもしれません。ほどなく、特設サイトがアップされ、スチールや内容を見てもその印象はあまり変わらないものでした。それでも、パルコプロデュースでメジャーな劇場での演出にこれまでとは違う何かを期待せずにはいられませんでした。

本編3時間15分、2部構成という結構長めの作りが、ますます期待感を強いものにしていきます。物語に登場してくる人物は、誰もみなダメさ加減を持つ、普通の人のように見えます。しかも、三浦さんの演出は決してそれ自体を否定も肯定もせずに、淡々とした流れの中で、綿密な構成で綴られていきます。ややもすれば、退屈な戯言を見せられているような感じになりがちな所を、役者それぞれの個性を引き出しながら、上手にかじ取りを行っているように思えました。

1部がそんな感じでしたので、2部では劇的な構成やいささかドラマチックな展開になるのか(タイトルのように)と思いきや、流れに任せるような生き方をしている登場人物同様、物語は何もなかったかのように終焉を迎えます。この辺は、これまでポツドールを見続けてきた人にとっては、消化不良気味であったかもしれません。

でも、僕はそんな静かな構成の中に、現在と言うリアリティーが表出しているようで、これはこれでありだなと思えました。プロデュース公演という制約の中、自分自身を率直に表現・演出しようとしている三浦さんがいたように感じます。これまでいくつもの実験的な芝居を行ってきていましたが、このメジャーで大きな劇場を舞台に、決して眼にみえる刺激的な行為や演出だけではなく、ひとつの物語として成立させる試みは逆に実験的要素があったように思います。

そんなわけで、1年3カ月ぶりの生の観劇は、その幕切れのゆるい雰囲気同様、いつもの居心地の悪さよりも際立った余韻を残してくれました。変わらぬ古澤君にも会えたし、大満足の夜でしたね。それにしても、久しぶりのパルコ劇場は、何故か思ったより大きさを感じなかったのが、とても不思議な気分でした。

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