2010年7月7日水曜日

井上ひさし追悼 戯曲資料特集展


仙台文学館へ行ってきました。昨年仙台に戻った際に、一度は行かなくちゃと思っていたのですが、ようやく昨日の午後に行ってきました。ギャラリーからは更に北の方角に位置する台原森林公園の一角にその建物はあります。地下鉄で行って、最寄りの駅から20~30分程度かけて森林公園を抜けながらのんびりと行こうかとも考えたのですが、あまり時間も無かったので、今回はバスで行くこととしました。


10分程バスに揺られていくと、最寄りのバス停に到着、そこからは歩いても5分ぐらいです。案内の看板を見ながら歩いていると、入口が見えてきました。入口からはゆったりとした緩い坂道が続き、やがて建物入口に到着です。

現在、仙台文学館では、井上ひさし追悼 戯曲資料特集展を行っています。(~7/11(日)9:00-17:00)昨年3月にこちらで井上さんの講演があり、是非行きたいと思っていたのですが、その時は内装工事の打合せが重なり、断念してしまいました。そうこうしてる間に、井上さんは今年4月に亡くなってしまい、もう二度と会う機会が無くなってしまったわけです。ほんと、残念です。

以前から、井上さんの執筆に関わる作業のことを、テレビや雑誌で見聞きしてはいましたが、その資料なんかを実際見ることはありませんでした。是非実物を見たいとの思いから、行ってきたわけです。2階の入口から中に入ると、3階へ上がる階段が目の前に見えてきます。階段の右手でチケットを購入し、3階にある展示場へ向かうのですが、この2階は文学館らしく開かれた図書館的な感じです。

さて、階段を上ると、いよいよ展示会場になります。右手奥にある常設展は後にして、戯曲資料特集展会場へと入りました。50席ほどの椅子が並べられた奥に、小上がりの舞台がしつらえてあり、その真中に遺影のように井上さんの笑顔のモノクロ写真が飾られ、周りにはこれまで行ってきた演劇のポスターが並べられていました。その部屋を左側に抜けると最初の部屋の2倍程度の広さで、資料や著書などが展示されています。

井上さんの芝居には多くの評伝物があります。先ず眼を惹いたのは、井上さんが自ら作成した主人公となる人物の年譜表です。林芙美子、太宰治やら主人公となる人たちの人生の歩みを時代と共に、調べ記したもので、独特の味のある筆跡で細かく、几帳面に書かれています。創作初期の構想メモやプロット、推敲を重ねている生原稿等、決して見ることが出来ないものがそこにはありました。

井上さんは筆が遅いことでも有名でした。「ロマンス」の原稿執筆の件で関係者に宛てた手紙が展示されているのですが、その内容は遅れていることへの幾分言い訳めいたことが書かれているのかと思っていました。読んでみると、決してそうでは無く、その場面への展開の中で、主人公の立場に立ってみたり、役者やお客さんのことを考えながら、検討している様子がありありと書かれていました。プロの作家として自分自身が先ず納得すること、そして役者、スタッフ、見に来られるお客さんを満足出来ないものは書いてはいけないといった決意のようなものも感じられました。遅れることはプロとして良くないことではありますが、そうなってしまうのも仕方ないないかなと思わせてしまうような手紙でしたね。

僕がこんな稚拙な文章で紹介するよりは、実際に目にして読んでもらった方が理解出来ると思います。このような資料の展示会は、絵や彫刻などとは違い、現物を見て感じるものではなく、ひとつひとつをゆっくりと読む必要があるので、ちょっと敬遠しがちになります。(時間がかかりますからね)それでも、そのひとつひとつを読んでいくと、充分には理解出来なくでも、井上さんが戯曲にかけた思いの一端を垣間見ることが出来ます。

会期は今週一杯です。森林公園の遊歩道を楽しみながら、見に行かれてはいかがですかね。

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