2010年9月1日水曜日

雑誌「せりふの時代」の休刊に思う。

以前紹介した「せりふの時代」が、2010/vol.56 夏号を最後に休刊となりました。年4回の季刊誌として、14年に渡り224作の戯曲を掲載してきたこの雑誌が休刊になるとの情報を得た時から、その意味をずっと僕は考えていました。


いわゆる文字離れからくる出版業界の不況、小説とも違う戯曲と言う特殊性、読者数の少なさなど、いろいろな原因が考えられます。演劇は好きだけど、その戯曲まで読む人は確率としては非常に少ないと思いますし、ましてや、演劇を一生涯見ない方がいてもなんら不思議なことではありませんので、雑誌の刊行自体特殊で、まぁ14年もの間、よく続いてきたものだとも言えます。

この中に、俳優の篠井英介さんが連載している「カンゲキ」と言うエッセイがあります。今回で16回目ですので、4年に渡り掲載されているものです。篠井さんは、今は珍しい女形の役者です。顔を見れば、たいていの人は思いだすのではないでしょうか。名前まで言える人はと言えば・・・、?が付くかもしれませんが、とても素敵な役者さんです。

最終回のエッセイに雑誌休刊について述べていますので、少し引用します。

「本誌が今号で休刊になります。

残念でなりません。本屋さんから一つ演劇の雑誌がなくなるということは、私は肩身がせまいような、悲しい思いでいっぱいになります。・・・中略・・・たとえば、「演劇」を一度も観ないで人生を終える人のほうが、日本国民の大多数であろうということ。・・・中略・・・こんな一般社会の「演劇」に対する認識を認識したうえで、私らは時にマニアックに時にエンターテインメントに、いろんなジャンルの芝居作りにうつつをぬかそうではありませんか。

演劇作りのプロたちが、ほんの少し社会との関係に関心をもって仕事をしていたら、『せりふの時代』は続いていたと思います。
こじつけですかね。いえ、せめて演劇界全体のことをもっと感じようとしてみませんか。まず、自分も芝居を作っているのに、他の芝居に興味のない人が多すぎますしね。・・・・略。」

これも現実のひとつ。演劇に限った事ではなく、広く一般的にアートを取り巻く環境をも表わしているように感じます。

さて、どうしたら・・・。答えは意外に簡単なのかもしれませんが、まだまだ考えること、しなければならないことはたくさんありそうです。

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